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輪廻と転生 前世の記憶に囚われた男女7人の愛憎劇。局所的なブームを巻き起こした『ぼくの地球を守って』(日渡早紀)

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80年代後半、世間は「矢追純一UFOスペシャル」「ノストラダムスの1999年滅亡予言」といったオカルトブームまっただ中。「ぼくの地球を守って」通称ぼくたまは、1987年に花とゆめで連載が開始されるや少年少女の間で「前世の仲間探し」が大流行、局地的ながら一大センセーションを巻き起こした問題作です。

ヒロイン亜梨子(ありす)は、草木と会話ができるちょっとアレな女子高生、気が弱い性格で近所の悪ガキ小学生・倫のいたずらに悩まされる毎日を送っている。
同じ高校に通う少年2人の不思議な夢の話を聞き、やがて自分もその夢=前世を共有する一人だと判明する。同じ頃、倫もある事故から前世の記憶を覚醒し、一人謎の動きを始める。倫の目的はなんなのか。
彼らの断片的な記憶をつなぎ合わせたその先には、前世の自分たちの死に関わる暗く重い過去があった。

亜梨子を含む6人の男女は、ほぼ同時期にある理由で死亡し全員同世代で現世へ転生を果たしているが、倫だけは9歳年下での転生をしている。この空白の9年間の理由が、本作の大きなキーとなっています。

少女漫画とあなどってはいけない。愛憎入り乱れた、男女7人の人間ドラマ。これは、非常に恨み節のこもった作品なのです。

誤解を恐れずに言うと、まあ万人受けするものではない。マニアックな世界観に拒絶感を覚えるのも無理ない話。ただ、それを置いても、ストーリーの構成力が素晴らしい。21巻という長さでありながら展開にほころびがなく、ラストで「ぼくの地球を守って」というタイトルに結びつくのは鳥肌もの。謎(伏線)が多くちりばめられており、キャラクターの魅力だけで持っている類のファンタジー漫画とは一線を画しています。確かに当時この漫画は、感受性豊かな10代の子を引き寄せる「引力」を持っていました。

主人公たちの前世は、地球ではなく遠く離れた宇宙の異星人。
前世の彼らは選ばれた人間であり、使命を与えられ、月で共同生活を送る仲間となる。

主人公は2人、一人は戦災孤児で天才的な頭脳を持つ男、紫苑(シ=オン)。
優秀な頭脳を持ちながらも横暴な性格でその出生から心に闇を持ち、裕福な友人にコンプレックスを持っている。
もう一人は、数億人に一人と言われる「キチェ・サージャリアン」という能力を持つ絶世の美女、木蓮(モク=レン)。ヒロイン亜梨子の前世です。

木蓮と紫苑の他、集められた個性豊かで優秀な月のメンバーたち。
しかし、ある事件をきっかけに月の仲間の仲は完全に壊れてしまい、その後全員悲しい死を迎えることになります。

前世からのしがらみを一番ひきずっているのが紫苑であり、元々性格の歪んでいた彼は、転生後もいっそうパワーアップしていろいろ暗躍し始めます。
最後は、前世世界とは関係ないESP能力を持つ少年達が、地球防衛のためにESP合戦を繰り広げます。このESPというのも時代を感じる…。
できればもうちょっと月基地メンバー達をメインに展開して欲しかったかな。リーダーのはずの柊なんか空気だし。(ちなみに彼は前世でも空気)


多くの少年少女をその世界観にハマらせた「ぼくたま」。その影響力はとても大きなものでした。

主人公たちは地球を愛していて、哀しい前世の記憶を思い出すたびに、やっと手に入れた平和(現世)の日々に喜びを感じています。
そう思えるような地球でずっとあって欲しいと願わずにはいられません。

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