天国ラブワゴンの恋の行方は?同じ日に死んだ男女が生き返りをかける『僕らはみんな死んでいる♪』(きら)
本作は、今までの作風とはがらりと変わった、作者の新境地ともいえるべき作品。
なんといってもタイトルが、「僕らはみんな死んでいる♪」。
このタイトルを聞いてわくわくする人にこそ、読んで欲しい作品です。過去の作品のようなほのぼのした雰囲気は全くないので、こころして。
女子高生・凛は、目覚めると見も知らぬまっしろな空間にいた。
空間を進むと、見知らぬ男女たちと出会う。彼らもお互いが知らない者同士で、目覚めるとここにいたという。映画「CUBE」にそっくりの出だし。
そこに現れたのは、自分を「神様」と名乗る謎の生き物。動物の姿に化けているが、人間語をしゃべり、人を食ったようなうさんくさい話し方をする、しかしこの状況の中の圧倒的上位に立つマスター。
この自称「神様」の説明によると、「ここにいる人間は全員同じ日に死んだ人間である」とのこと。
ここで大型スクリーンに、自分たちが死んだ瞬間や死んだ後の周りの様子等が映し出され、自分たちは本当に死んだのだということを主人公たちは思い出していく。
しかし、ある条件を満たせば、この中から生き返ることができる人間がいるというのである。
簡単に言うと少女漫画版「GANTZ」。
しかし、本作は少女漫画ですので点数稼ぎのバトルをするわけではない、彼らが生き返りをかけてすること、それは「ラブ・ゲーム」
この中で本気で恋愛をして初めに出来上がったカップル2人だけが生き返ることができるというわけです。
もちろん嘘申告の恋愛はいけません。
ゲームマスターである「神様」だけが持っている死神の目ならぬ神様の目で、本当に恋愛している人間の頭上にはその恋の大きさに準じたハートが浮かび上がっているのが見えるらしい。
女子高生・マジシャンの弟子・バーのマスター・金髪の外人・神経質なおじさんetcと、年齢・職業・性格、はては国籍まで異なる男女8人。(この時点で男5人、女性3人)
中でも異彩を放つのは、生前は超人気俳優だったユアンの存在。美少年で曰くつきのユアンがいることで、この恋愛ゲームはぐっと深みを増してきます。あいのりに本当のアイドルが一人まぎれちゃったような感じか。
そうは言うものの、現世に恋人を遺してきた人間もいたりして、はじめはこの否応なしに与えられたバカげたゲームに全員とまどうばかり。
だいたい、みんなホストでも戦争屋でもなく、普通の生活を送ってきた人間なので普通に他者への思いやりを感じるシーンも多く、本当に性格の悪い奴はいません。
しかし、ユアンを追って後追い自殺した女子高生が特別参加してきたことから、空気は一変。
「はじめから片方が恋愛感情を持っている。しかも自殺をする程」という有利な条件を持つ彼女の出現で、焦りを見せるメンバーが現れはじめ…。一方で、学校生活が原因で自ら命を絶って死んだ凛は、生き返る気はないとゲームを拒否する。
ラストがどうなるのか、とにかく続きが気になる作品です。
僕らはみんな死んでいる♪(きら)
連載雑誌:りぼん 発表年:1982年
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