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16歳下の少年との恋を描いたドラマチックな恋愛に目が離せない 『砂の城』(一条ゆかり)  

  • 砂の城 1 (クイーンズコミックスプレミアムシリーズ)
  • 砂の城 2 (クイーンズコミックスプレミアムシリーズ)
  • 砂の城 3 (クイーンズコミックスプレミアムシリーズ)
  • 砂の城 4 (クイーンズコミックスプレミアムシリーズ)
  • 砂の城 5 (クイーンズコミックスプレミアムシリーズ)
  • 砂の城 6 (クイーンズコミックスプレミアムシリーズ)

一条ゆかり先生と言えばドロドロした女の情念が大好物な少女漫画界の大御所、「砂の城」は昼メロでドラマ化もされた作者の80年代の代表作。

圧倒的にドラマチックで息もつかせぬ展開。シリアスで読み応えのある話が読みたい!という方にはぴったりの作品です。尚、ヒロインの思考が非常に女性的なので、男性が読んでもおそらく理解できないかもしれません。

本作は、ナタリーという女性の人生を中心に描かれていくのですが、このナタリーはいわゆる「悲劇のヒロイン」を地でいく女性。その悲劇っぷりときたらなかなかのもの。

お金持ちのお嬢様に生まれたナタリーは優しい両親や周りの人たちに囲まれ、それはそれは幸福な幼少生活を送る。孤児で幼馴染のフランシスと恋に落ち、結婚を誓い合う2人。しかし優しかったナタリーの両親が突然他界し、保護者となった伯母は結婚に猛反対、2人は駆け落ちの末に崖から飛び降り、フランシスはそのまま死体もあがらず行方不明になってしまう。

そして数年後、愛する人を失い悲しみの中ひとり生きるナタリーは、ある日死んだはずのフランシスにそっくりの青年に出会う。なんと、崖から落ちたフランシスは記憶を失い、別の土地で他の女性と結婚して子供まで作って幸せな生活を送っていたのだった。

やがてフランシスは全てを思い出すが、事故で今度は本当に帰らぬ人となってしまう。フランシスの妻は、彼を追って後追い自殺。2人の葬儀に参列したナタリーは、一人残され孤児になった彼らの5歳の子供マルコを引き取る決意をする。その子にフランシスと名づけて…。

以上がナタリーが悲劇のヒロインにならざるを得なかった直接の原因である冒頭のあらすじ。

心中したあげくに自分だけ生き残る、好きな男に記憶を失われ別の女と結婚されて子供まで作られている、とどめに2回も愛する人の死を体験することに。しょっぱなから猛ダッシュで不幸のオンパレード。幸せそうなナタリーが見れるのは、全巻通して最初の数ページだけ…。

記憶がない以上、彼は悪くない…でもその家庭は本来自分がいる場所だったのに!!と、ナタリーの衝撃たるや発狂寸前。

しかしこれはほんのプロローグ。
愛する男と別の女が作った子供を育てることで、ナタリーは大きな幸せと大きな不幸が混じり合った凡人には想像もつかないような人生を歩んでいくことになるのです。

引き取られたちびフランシスは雛の刷り込みのごとくナタリーを崇拝し、健気にも大きくなったらナタリーを守れる男になろうと決意。たった5歳にして実母の思い出を封印して、ナタリーのために生きようと決意するちびフランシス。
源氏物語の男女逆版さながらにちびフランシスはナタリーだけを見て育つわけで、その愛くるしさと言ったら、20年以上前に年下萌えむしろショタ萌えとは、さすがは一条ゆかり。

そのフランシスが成長して予想通りの超絶イケメンになるわけで、またまたナタリーの苦悩が始まってしまいます。ちなみに2人の年の差は、16歳です。

愛し合いながらもなかなか決着のつかないナタリーとフランシス。

そして、いつかっ!いつかハッピーエンドが!と待ち望んでいた読者の予想を軽く超えたラストを迎えます。

情熱的でドラマチック。平凡すぎる自分の人生と比べると少しだけうらやましい気もする。
人生勉強のためにも一度は読んでみてほしい作品です。

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