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バブルが生み出したウルトラ級のタカビー女・白鳥麗子の純愛 『白鳥麗子でございます!』(鈴木由美子)

腰に手を当てて、斜め45度上を向いて声高らかに「おーほほほほほほほほほほほ」

皆さん覚えていますか?これが、白鳥麗子の決めポーズです。さあご一緒に!

バブル時代末期に生まれたこの漫画は、容姿端麗で高飛車でプライドがエベレスト級に高い社長令嬢のお嬢様「白鳥麗子」が巻き起こすギャグコメディ漫画。鈴木保奈美版、松雪泰子版と作られたドラマも好評で、白鳥麗子の名前は一気にお茶の間にまで広がりました。

バブル女を描いたら右に出るものはいないと思われる鈴木由美子、コミックスのページの隙間から漂うバブルの香り。麗子は社長令嬢のお嬢様なので、ボディコンを着たり扇子をふったりはしないけど、ファッションや髪型にはやっぱり時代の名残がちらほらと。そんな当時の文化や独特の感性を懐かしみながら読むのもこの漫画の楽しみのひとつです。

白鳥麗子は、高校時代ずっと大好きだった哲也に告白されたものの、高すぎるプライドが邪魔をして告白の返事を断ってしまう。その後哲也は東京の大学に進学し、麗子は哲也を追いかけて同じ大学に。
麗子は哲也がまた告白をしてくれるのを今か今かと待っているが(プライドが高くて自分からは言えない)、哲也は麗子のことはすっかり忘れてしまったかのようで…。

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哲也を追いかけてきたのに知らない人のふりをするプライドの高さ
鈴木由美子『白鳥麗子でございます!』1巻(講談社)より

とにかく麗子のプライドは高くて高くてものすごく扱いにくい女なのだが、中身は哲也のことが好きで好きでしょうがなくて哲也にだけは嫌われたくない、一途にひとりの人を想い続ける乙女心の持ち主。実は哲也が告白する前から、幼少の頃からずっと哲也一筋という気合の入った片思いぶり。

どのくらい一途かというと、あるエピソードで哲也にがつんと振られた麗子はどうなっちゃうかというと、なんと存在自体が薄くなって消えてしまうのだ。んな馬鹿な笑

哲也なしでは生きていけないくらい大好きなのに、素直になれない。タカビー(死語)でプライドの塊でありながら、実は健気でいじらしく、女性からみても憎めない愛すべきキャラクター白鳥麗子。だから白鳥麗子は女性の人気を勝ち得たんだと思う。

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哲也に振られたショックで影が薄くなる麗子
鈴木由美子『白鳥麗子でございます!』5巻(講談社)より

基本的に思い込みが激しくて「一番男にやっちゃいけないこと」をやっちゃう麗子は、哲也を困らせてばかり。

この人の漫画は、感情表現が非常にシビア。
女の卑しい気持ちを木っ端微塵に砕く男の台詞が辛辣で、トラウマが残るレベルの救いのなさだった。哲也の激怒りする場面は読んでるこっちまでドン引きしてしまうほど。少女漫画と油断していると、結構きつーい一発をもらっちゃうのだ。

鈴木由美子は女性の過剰なコンプレックスと自意識の生々しい話を得意としているけど、彼女の描く女性は、言っては悪いが本当に性格の悪い女ばっかりだ。自分勝手で、思い込みが激しくて、とにかくすごい見栄っ張り。特にコミックス収録の過去の短編に出てくるのは、馬鹿な女が馬鹿なことをして馬鹿な目にあうっていう話が多い。(でもこの突き放した感が、心にささる。)

ただ、白鳥麗子以降はギャグレベルにまで消化させてくれて普通に主人公にも好感が持てるし、笑えて共感もちゃんとできる。女の見栄に隠された乙女心をかくのもうまい。作者の世の女性に対する観察眼はかなり高いと思う。

ちなみに巻数が進むにつれてギャグ度は高くなり、麗子はもはやただの変な人…。ギャグ漫画としてはレベルがあがっているからいいんだけど。

バブリーな雰囲気に臆せずぜひ手にとって欲しい。中には色あせないピュアな女心がたくさんつまっている作品ですよ。

白鳥麗子でございます!(鈴木由美子)

連載雑誌:mimi(講談社) 発表年:1988年

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